白い壁を見渡す中で、探し回るは果てない制服。
その日−。
俺は事業所TOPが運転する車の中にいた。
アスファルトに焼け付く陽射しで微かに眼が眩む中、彼が話しかけるのを、なんとはなしに耳にしていた。
せせらぎは静かな時の流れのように。
風切る向こうは滑るようなアスファルトの上。
垂れ流される言葉の羅列をなんとはなしに耳にする。
ホテル時代の何人目かの事業所TOPは、何かにつけ出かける時に俺を連れて行こうとしていた。こちらが仕事でてんてこ舞いしていようと「萬さ〜ん。ちょっと付き合ってくださ〜い」と、お構いなしに車に乗せられるのだ。仕事が遅れると思いつつも、TOPに逆らえる訳もなく、ただなすがままなすがまま。
事業所内でもそうなのだが、TOPは女性が近くにいなくなると、とたんに人格が変貌する。ほんとに瞬時に。
ものすごい神妙な面持ちで俺をデスクに呼ぶと、真剣な声で「萬さん…@@ちゃんを口説き落とすのにはどうすればいいか教えてください」とか、「この会社の中でただでやらしてくれそうなのは誰かこっそり教えてください」とか、そんなことばかり申すのだ。そして俺らの前で腰を振るのだ。
俺らは仕事モードに入っているので、思考の切り替えが上手くいかず、顔を見合わせただ呆然となるのが常だった。
その乾く唇から流れ出る音は欲望のせせらぎ。
その乾く咽から発する音は肉欲のせせらぎ。
心に蠢く欲望の光は、人類皆共通の大前提。
車の中では、相変わらずTOPの言葉の暴走が続いている。
今からちょっと大変な手続きに市役所に向かうというのに、このお気楽さはなんだ? と問いたくなるが、それもあほらしいので肉欲極まりない言葉のせせらぎを適当に受け流すのだ。
幾許かの時間が流れすぎた後、彼はこう質問してくる。
「萬さん、この辺にレンタルビデオ屋ってどの辺にありますか?」
他県出身の彼は、あまりこの辺のそういった事情を知らないようだ。
そう言ってる傍から、潰れたレンタル屋の脇を通り過ぎた。
2・3思いつく場所があったので、俺は場所を教えると、「あー、あそこですね。なるほど。じゃあ帰りに付き合ってください」と言ってくる。仕事があ…とか思いつつも、ハンドル握るはTOPのため、ダッシュで帰ることも出来はしない。肩の力を落とし、ホテルの制服に付着したゴミを取って捨てた。
市役所の仕事も終え、帰りに寄るはTOPが住むアパート近くの、本屋も兼ねたレンタル屋。彼はここの会員でもあるようだ。
何故か嬉々としているTOPの姿に危険なものを感じながら、ともかくも車から出て、レンタル屋の玄関先まで行くと彼は俺にこう言った。
「萬さん。この会員カードを貸しますので、ちょっとビデオを借りてきて欲しいんですが。いえいえ、大したものじゃありません。ただのアダルトビデオです」
−はい?
「でも私にも好みがありまして、出来れば巨乳で乳輪が大きく、更には婦人警官の制服ものを…」
−はい?
「知っての通り、私はこの近所に住んでますので、迂闊に借りられないんですよ。ばれたら恥ずかしいですし。その点萬さんなら問題ないと…」
−はい?
「もう一度言いますね。巨乳で乳輪が大きく、婦人警官の制服ものを…」
−はいー?
肉欲のせせらぎが、鉄砲水に変わった瞬間だった。
ちょっと待ってください。俺は今仕事中で、更にはほれこの通り制服です。いっぱしのホテルマンの制服です。流石なんでもそれはちょっと…。
「いえいえ、萬さんなら大丈夫です」
何が大丈夫なんだー! との叫びも空しく、「じゃあ私は本でも読んで待ってますから」と言ってTOPは本の中に埋もれていく。
鉄砲水の濁流が、制服の俺を飲み込んでいく。
手にしたカードを見つめつつ、俺は制服のままレンタルコーナーに突入する。
アダルトコーナーを捜し求め、制服のアダムがイヴを目指して突入する。
いずこなるかや制服のイヴ。
いずこなるかや巨乳のイヴ。
いずこなるかや乳輪のイヴ。
白い壁を見渡す中で、探し回るは果てない制服−。
しかし…。
いくら探し回っても、どんなに探し回っても、アダルトコーナーのコの字も見つからない。普通影の方にあるはずなのに…。
かなり探し回ったが、イヴの姿はどこにもない…。
諦めてTOPが立ち読みしてるとこまで戻り事情を話すと、「うっそ〜!」と、慌ててレンタルコーナーまで来て、「じゃあ萬さんはそちらから探してください。私はこちらから探します」
…TOPは真剣だった。見事なほどに真剣だった。
しかしやはりないものはなく、がっかりした顔を浮かべたTOPが悲しく「帰りましょう」と呟く。
俺は「レンタル屋でもアダルト置いてないとこってあるんだなあ」と、変に感心していた。
肉欲のせせらぎが静寂を取り戻し、滑るようなアスファルトの上−。
TOPは元気を取り戻し、「じゃあ今度は違うレンタル屋教えてくださいね」
制服のアダムは深いため息をつきながら、夕刻の空に眼を配る。
数日後、更に激しい濁流に飲み込まれるとは、今はまだわかる訳もなく。
アスファルトは灰色のせせらぎになって帰路に着くのだった。
…婦人警官で巨乳で乳輪が大きいのって…あんのか?
その日−。
俺は事業所TOPが運転する車の中にいた。
アスファルトに焼け付く陽射しで微かに眼が眩む中、彼が話しかけるのを、なんとはなしに耳にしていた。
せせらぎは静かな時の流れのように。
風切る向こうは滑るようなアスファルトの上。
垂れ流される言葉の羅列をなんとはなしに耳にする。
ホテル時代の何人目かの事業所TOPは、何かにつけ出かける時に俺を連れて行こうとしていた。こちらが仕事でてんてこ舞いしていようと「萬さ〜ん。ちょっと付き合ってくださ〜い」と、お構いなしに車に乗せられるのだ。仕事が遅れると思いつつも、TOPに逆らえる訳もなく、ただなすがままなすがまま。
事業所内でもそうなのだが、TOPは女性が近くにいなくなると、とたんに人格が変貌する。ほんとに瞬時に。
ものすごい神妙な面持ちで俺をデスクに呼ぶと、真剣な声で「萬さん…@@ちゃんを口説き落とすのにはどうすればいいか教えてください」とか、「この会社の中でただでやらしてくれそうなのは誰かこっそり教えてください」とか、そんなことばかり申すのだ。そして俺らの前で腰を振るのだ。
俺らは仕事モードに入っているので、思考の切り替えが上手くいかず、顔を見合わせただ呆然となるのが常だった。
その乾く唇から流れ出る音は欲望のせせらぎ。
その乾く咽から発する音は肉欲のせせらぎ。
心に蠢く欲望の光は、人類皆共通の大前提。
車の中では、相変わらずTOPの言葉の暴走が続いている。
今からちょっと大変な手続きに市役所に向かうというのに、このお気楽さはなんだ? と問いたくなるが、それもあほらしいので肉欲極まりない言葉のせせらぎを適当に受け流すのだ。
幾許かの時間が流れすぎた後、彼はこう質問してくる。
「萬さん、この辺にレンタルビデオ屋ってどの辺にありますか?」
他県出身の彼は、あまりこの辺のそういった事情を知らないようだ。
そう言ってる傍から、潰れたレンタル屋の脇を通り過ぎた。
2・3思いつく場所があったので、俺は場所を教えると、「あー、あそこですね。なるほど。じゃあ帰りに付き合ってください」と言ってくる。仕事があ…とか思いつつも、ハンドル握るはTOPのため、ダッシュで帰ることも出来はしない。肩の力を落とし、ホテルの制服に付着したゴミを取って捨てた。
市役所の仕事も終え、帰りに寄るはTOPが住むアパート近くの、本屋も兼ねたレンタル屋。彼はここの会員でもあるようだ。
何故か嬉々としているTOPの姿に危険なものを感じながら、ともかくも車から出て、レンタル屋の玄関先まで行くと彼は俺にこう言った。
「萬さん。この会員カードを貸しますので、ちょっとビデオを借りてきて欲しいんですが。いえいえ、大したものじゃありません。ただのアダルトビデオです」
−はい?
「でも私にも好みがありまして、出来れば巨乳で乳輪が大きく、更には婦人警官の制服ものを…」
−はい?
「知っての通り、私はこの近所に住んでますので、迂闊に借りられないんですよ。ばれたら恥ずかしいですし。その点萬さんなら問題ないと…」
−はい?
「もう一度言いますね。巨乳で乳輪が大きく、婦人警官の制服ものを…」
−はいー?
肉欲のせせらぎが、鉄砲水に変わった瞬間だった。
ちょっと待ってください。俺は今仕事中で、更にはほれこの通り制服です。いっぱしのホテルマンの制服です。流石なんでもそれはちょっと…。
「いえいえ、萬さんなら大丈夫です」
何が大丈夫なんだー! との叫びも空しく、「じゃあ私は本でも読んで待ってますから」と言ってTOPは本の中に埋もれていく。
鉄砲水の濁流が、制服の俺を飲み込んでいく。
手にしたカードを見つめつつ、俺は制服のままレンタルコーナーに突入する。
アダルトコーナーを捜し求め、制服のアダムがイヴを目指して突入する。
いずこなるかや制服のイヴ。
いずこなるかや巨乳のイヴ。
いずこなるかや乳輪のイヴ。
白い壁を見渡す中で、探し回るは果てない制服−。
しかし…。
いくら探し回っても、どんなに探し回っても、アダルトコーナーのコの字も見つからない。普通影の方にあるはずなのに…。
かなり探し回ったが、イヴの姿はどこにもない…。
諦めてTOPが立ち読みしてるとこまで戻り事情を話すと、「うっそ〜!」と、慌ててレンタルコーナーまで来て、「じゃあ萬さんはそちらから探してください。私はこちらから探します」
…TOPは真剣だった。見事なほどに真剣だった。
しかしやはりないものはなく、がっかりした顔を浮かべたTOPが悲しく「帰りましょう」と呟く。
俺は「レンタル屋でもアダルト置いてないとこってあるんだなあ」と、変に感心していた。
肉欲のせせらぎが静寂を取り戻し、滑るようなアスファルトの上−。
TOPは元気を取り戻し、「じゃあ今度は違うレンタル屋教えてくださいね」
制服のアダムは深いため息をつきながら、夕刻の空に眼を配る。
数日後、更に激しい濁流に飲み込まれるとは、今はまだわかる訳もなく。
アスファルトは灰色のせせらぎになって帰路に着くのだった。
…婦人警官で巨乳で乳輪が大きいのって…あんのか?
コメント
レンタルビデオというと初期の頃はアダルト8割だったのよね…新しく出来たらしいレンタル屋に映画ビデオがあるか問い合わせたら「普通のものはこれから取りそろえるところで…」みたいなことを言われたのを思い出す(爆)
新聞広告見て電話したんであって、別にアダルトレンタル屋とも書いてなかったんだがなぁぁぁぁー
確かに昔はそっちが主流だったわなーw
それが一番儲かる手段だったろうし。
この業界も成熟した証しだろかアダルトないのは。
実はこれには後日談あり。
そのうちうpする。
マーチングドラムは今も鳴り響いていて、煙草やめる前67Kg→煙草やめダイエット前76Kg→現在69Kg。
すげえぞ俺。